国土交通省中部地方整備局に申し入れ

設楽ダムの建設中止を求める会は、代表・事務局長を含めて5名で2015年12月16日中部地方整備局を訪れ、河川政策課の課長補佐馬淵氏他1名に対して、「地質地盤の要件を欠く設楽ダムの事業は中止するほかない、転流工や本体工事は止めるべき」との申し入れを行い、大臣・地整局長宛て申し入れ書を手渡ししました。

2015年12月16日

国土交通大臣            石井 啓一  様

国土交通省中部地方整備局 局長   茅野 牧夫  様

 

設楽ダムの建設中止を求める会  代表 市野 和夫

 

設楽ダムの計画地および周辺は、大規模断層、深層崩壊、水漏れなど、ダム建設の地質地盤要件を欠いています。事業を中止し、地域住民と次世代のためになる真の公共事業に転換するよう申し入れます。

以下、申し入れの理由を述べます。

1.国による地質地盤調査の経過と問題点

ダムサイト選定のための地質調査は、主として平成1~4年度ころに行われ年度ごとに“調査報告書”が出され、同4年度“地質検討業務報告書”で課題整理が行われ、同5年度の“地質検討業務報告書”で大筋のまとめがなされた。

この平成5年度のまとめでは、それまでに見つかっていたダムサイトに向かう断層の連続性の調査を「ダムサイトに向かう延長方向は健岩露頭であるため、断層はそこまで」として、それ以上の調査を打ち切っている。また、平成4年度のU1およびD1ボーリング調査で見つかった規模の大きい断層破砕帯(F-1,F-5)、および右岸松戸地区の凹地(二重山稜地形)について、調査計画は立てたがそれを実施しないまま、それらの問題をダム建設上の問題として表面化しないように処置したと判断される。

その後、平成7年1月の兵庫県南部地震があり、平成8, 9年度に航空写真と現地踏査によるリニアメント(活断層)の見直しが行われたが、形ばかりのものであった。また、左岸側第三紀堆積層の存在や南北走向の断層による貯水池からの水漏れ可能性の調査もなされていない。

平成10年度ころから現在のダムサイトの設計のための狭い範囲に絞ったボーリングや横坑調査が行われてきたが、地質地盤の根本問題の検討はなされていない。

2.設楽ダム予定地周辺の地質地盤は悪い

2.1  ダムサイト直近に無視できない大きな断層破砕帯(平成4年度ボーリング調査報告書のF-1,F-5)が存在する。

2.2  当初のダムサイト予定地(中流案)を変更せざるを得なかった直径100mにおよぶ大きな緩みゾーン(地すべり地塊)が右岸に存在し、その緩みゾーンを取り巻く松戸地区全体が二重山稜地形を成し、大規模な深層崩壊を起こす恐れがある。

2.3  ダムサイト上流部左岸側に第三紀の堆積層が広がっており、ダム湖貯水の地下浸透による地すべり、液状化、地下水異常、分水界を越えた漏水などが生じる恐れがある。

2.4  右岸ばかりでなく、ダムサイト左岸側の尾根~斜面にも直線状の凹地があることから、深層崩壊を起こす恐れがある。

3.なぜ、この付近の地質地盤が悪いのか?(背景説明)

3.1  国の地質業務検討報告書には書かれていない北北東-南南西方向の大きな断層破砕帯がダムサイト左岸直近を通っている。“ない”こととされている「第四紀断層(活断層)」の可能性が高く、その横ずれ断層運動により、岩盤に広範囲に亀裂が生じ、緩みが生じているものと推定される。緩んだ岩盤が、重力により落ち込む正断層も多数見られる。

3.2  中部地方の山岳地帯は全国的にも有数の地盤隆起が生じている地域であり、設楽の山地も隆起傾向にある。地下深くから隆起した岩盤は、上部の地盤(被覆)が浸食され、重しがなくなることによって膨らみ、亀裂が入り、重力によって谷側に傾斜・屈曲し、岩盤亀裂が発達して崩落しやすくなる。

3.3  ダムサイト左右両岸に、貫入岩脈、あるいは片麻岩の層理面が谷側に傾斜する(流れ盤の)状態が見られ、深層崩壊の可能性を増している。

3.4  左岸側の第三紀層は、透水性が高く、地層が南側に緩く傾斜していることから、水漏れや地下水異常を起こしやすく、貯水地として不適当な地質・地形である。

4.ダム建設は中止するほかない

一般に、規模の大きい断層破砕帯の存在、深層崩壊を起こす危険性、あるいは水漏れの可能性が否定できないところに、ダムを開発してはならない。以下に述べるとおり、これらの課題が全部そろっている設楽ダム計画地での建設は中止するほか、選択の余地はない。

4.1  至近に規模の大きい断層破砕帯が通っており、その枝断層を含めれば、ダムサイトを何本もの断層がとおっている。これらの断層は第四紀断層と推定され、断層運動によって、一帯の岩盤は亀裂が発達し、深部まで緩んでいる。

4.2  右岸下流の緩みゾーンの存在ばかりでなく、松戸地区の二重山稜地形、および左岸側ダムサイト付近の尾根~中腹に発達する直線状凹地形からみて、左右両岸とも、地下深くまで岩盤が緩んで風化しており、深層崩壊の危険地であることを示している。

4.3  加えて、田口、小松、添沢地区など、ダム湖上流左岸に当たる地区では、第三紀層がダム湖の常時満水面の下に潜ることから、貯水が地下に浸透し、地すべり、液状化、地下水汚染等を引き起こすことは必至であり、荒尾地区や清崎方面に分水界を越えて水漏れする可能性も否定できない。南北方向の断層破砕帯の存在も確実なので、水漏れは無視できない問題である。

5.本当に役に立つ公共事業を!

設楽ダムは特定多目的ダム法に基づいて計画されている。この法律は、高度経済成長、つまり産業・都市中心の開発をめざして、都市用水源や発電目的のダムの開発を容易にする法律である。

第二次大戦後50年以上にわたってひたすら経済成長を目的に開発され続けてきた日本列島には、従来のような良好な開発の適地はほとんど残されていない。

豊川用水は総合用水事業・Ⅱ期事業で拡充され、水源のインフラ整備はすでに十分である。

また、流域面積の10%に満たない集水域しかない最上流部のダムによる豊川下流部の洪水対策が有効でないことは明らかである。その上、河川整備計画が造られてから14年経過して、河道や堤防の改修は進んでおり、治水の上でも設楽ダムの必要性はない。

「環境にやさしいダムづくり」「流水の正常な機能の維持」という羊頭を掲げて、奥三河の自然と豊川の清流を破壊し、三河湾まで大きな影響を与える環境破壊ダムを造ることは、時代遅れ、無駄遣い、後の世代への大きなつけ回しの愚行である。

有限な地球環境を考慮して、持続可能な地域づくりに全力でとりくまねばならない時代である。豊かな自然を活かした奥三河・東三河の持続可能な地域づくりを支援する真の公共事業への転換がなされるべきである。

以上sitara01

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