渇水対策と異常渇水への対応について

今年の豊川水系の空梅雨、夏の少雨は、観測史上第1位
市野 和夫(元愛知大学教授)

豊川水系では、今年は例年にない少雨の夏でした。梅雨時の6月・7月、および水稲かんがい期の5〜8月の降水量を、気象統計資料で比較点検してみました。

①作手観測点のデータ: 気象庁が長期観測をしている作手のデータによります。観測資料の期間は、1976年から2013年の7月まで、38年間。
②2013年の6月と7月の降水量: 今年、2013年の6月の降水量は、期間中第4位の159mm、7月は期間中第2位の75.5mm、6月と7月を合計した2ヶ月の合計降水量234.5mmは、観測記録のある38年間で第1位の少雨(空梅雨)でした。
③2013年5〜8月の降水量は、469.5mmで、これまでの最少であった1994年の535mmを大幅に下回るダントツの1位の少雨でした。
④設楽ダム計画と渇水規模: 設楽ダムは、“近20年”の2位に当たる1996年(6・7月の合計は568mm、5〜8月の合計844mm)の渇水に備えることになっていますが、今年はそれをはるかに超える少雨の夏でした。
⑤空にはならなかった豊川水系の貯水施設: なお、豊川用水・総合用水の貯水施設の9月3日現在の貯水率は、18.6%で、まだ空になっているわけではありません。
【ダム+調整池の合計の貯水率・貯水量の推移】
貯水率 7月31日61.6%; 8月15日39.0%; 8月28日25.2%; 9月3日18.6%
貯水量(千m3)  31900;      20200;       13000;        9640

注:渇水対策としてのダム計画・・・異常渇水に備えるものではない
日本国の水資源開発は、概ね10年に1度の規模の渇水に耐えられるように整備する方針となっている。豊川水系では、豊川総合用水事業で概ねこの水準の施設が整っていること、また、今夏の少雨は10年に1度の規模をはるかに超えた異常渇水であることを考慮すれば、この渇水を新たな水源施設(設楽ダム)の建設を正当化するための材料とするべきではない。仮に、異常渇水に備えるために水源施設を開発するとすれば、50年とか100年に1度しか起きない現象に対して、巨大な投資をすることとなり、財政的に耐え難い負担となる。また環境影響が途方もなく大きくなる。異常渇水に対しては、節水、水利調整、他水系からの融通、地下水等の利用、などによりやりくりすることが求められる。愛知県の水道管〜導水設備は、西の木曽川水系から東の天竜川水系まで連絡しており、水利調整でやりくりできる。今年の異常な夏、日本海側からの水蒸気の流れが木曽山脈でたっぷり雨を降らせたので、木曽川水系は流量が豊かである。

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