- 2005年5月12日 15:30
- 三河港港湾計画改訂案について | 六条潟と三河湾を守る取り組み
意見1 環境影響評価の検討を最新の科学的知見に基づいて行うため、専門家からなる「環境影響評価委員会」を設けたとあるが、本事業が海岸・海洋の環境に与える影響に与える影響を評価するために必要な海岸地形や海洋の流動、水質、生態系の専門家が欠けている。関係委員を補充して早急に検討していただきたい。
理由 最近、海岸・海洋環境にとって河川がきわめて重要な役割を果たすことが認識されて来て、研究が進められるとともに、多くのシンポジウムが開催されるようになった(参考文献 1, 2, 3, 4, 5, 6参照)。またそこには河川事業が海洋環境に与える影響も議論されている。そしてダムの建設が海域の環境に望ましくない影響を与えている研究結果も発表されている(例えば参考文献7)。したがって設楽ダムが海岸・海洋に与える影響を検討することができる専門委員を「環境影響評価委員会」に加えて検討する必要がある。
意見2 この方法書では、設楽ダムの建設が海岸・海洋の環境に与える影響を把握する項目がすっぽり抜けている。これは重大な欠落であるので、早急にこの調査項目を追加しなければならない。
理由 かつて三河湾は日本で指折りの豊かな生産力の高い内湾であった。しかし経済の高度成長期以来、環境基準達成率はわが国で唯一50%を切って最低であり、日本で最も汚れた海になっている。この最大の原因は、著しい閉鎖性水域で海水交換が悪いこの内湾に、広大な埋め立てを行って、海域自身がもつ自浄能力を奪ったことである。これと共に、豊川用水事業によって、湾水を涵養する河川水量が大きく減少して、湾水の循環とくに鉛直循環が弱くなったことも重要な要因になっている。これらの内容は、参考文献8に分かり易く述べてある。また河川流量が湾内の海水循環にとって如何に重要であるかは、参考文献9および後述の参考資料2に、具体的に示されている。
したがって現状の三河湾はいわば瀕死の海といってもよい。この状態を抜けるために、関係する各機関は多大な努力を払っているが、まだ効果は上がっていない。したがってこの病状を悪化させるような措置は絶対避けねばならない。ところが設楽ダムの建設はこの瀕死の病人に鞭打つような所業の可能性がある。ゆえに設楽ダムの建設事業が海域に与える影響については、慎重かつ詳細に調査する必要がある。
またダム建設の結果、海岸の維持に必要な川から海への正常な砂の供給が減少し、海岸線が後退して海岸浸食が発生したり、干潟・藻場が消失して海の生態系や漁業に大きな影響を与えていることは、最近は周知のことであり、既に示した参考文献にも多く触れてある。
したがって設楽ダムが海岸・海洋に与える影響についての必要な調査と、それに基づく評価を欠くことはできず、方法書においても当然十分に考慮すべきである。
意見3 設楽ダムの影響評価方法書において、重要と考えられる海岸・海洋への調査項目を無視した理由を説明していただきたい。
理由 設楽ダムの影響評価に重要と思われる海岸・海洋に関する調査項目を無視したのには、それなりの理由があると考えられる。これは大切な問題であるので説明をお願いする。
これに関係するものとして、貴局に「第14回豊川の明日を考える流域委員会」に豊川の水量変化が、三河湾の鉛直循環流に及ぼす計算結果を提出して、その影響は無視できるとの結果を発表している。しかし小生が検討したところ、この計算は間違っていて、信頼できないと思われる。このことは2004年2月に国土交通省中部地方整備局名古屋港湾空港技術調査事務所が主催した“海域環境の保全・再生のための市民と行政の具体的な連携・協働のあり方を考える市民会議”に招待されて小生が行った講演の一部で述べてある。そのときのOHP原稿を参考資料として、また内湾の鉛直循環流と河川流量の関係を既存研究結果から抜粋したものを参考資料2として添付しておくので、参考にしていただきたい。
参考文献
(1) 水産海洋学会、シンポジウム「水系をつないだ生態系研究—統合的な沿岸の管理の可能性を探る」、1997年、水産海洋研究、61巻、179−206ページ.
(2) 京都大学防災研究所、杉本隆成・奥西一夫・諏訪浩編、シンポジウム「土地・河川・海岸を通じての物質移動」、2000年、月刊海洋、42巻、135−201ページ.
(3) 日本海洋学会 沿岸海洋部会、シンポジウム「陸と海の相互作用—海は陸にどのように依存しているか」2003年、沿岸海洋研究、40巻、97−179ページ.
(4) 日本陸水学会、シンポジウム「山・川・海を通じて広域にわたる環境保全、共生のあり方を考える」、2003年9月、岡山理科大学.
(5) 日本水産学会 水産環境保全委員会、シンポジウム「河川流量、流入土砂および水質の変化にともなう沿岸生態系の応答」、2003年12月、東京大学.
(6) 日本海洋学会 海洋環境問題委員会、シンポジウム「比較流域・沿岸学の試み—河川流量・地形変化・管理を軸として」、2004年3月、筑波大学.
(7) 宇野木早苗(2004):内湾の環境や漁獲に与えるダムの影響、海の研究、13巻3号、301−314ページ.
(8) 西條八束(2002):内湾の自然誌—三河湾の再生をめざして、76ページ、あるむ.
(9) 宇野木早苗(1998)内湾の鉛直循環流量と河川流量の関係、海の研究、7巻5号、283−292ページ.
参考資料
(1) OHP原稿
(2) 海域内の鉛直循環流量の河川流量に対する比率
住所 略
氏名 宇野木早苗 (80歳、日本海洋学会名誉会員、元東海大学教授、元理化学研究所主任研究員、元日本海洋学会沿岸海洋研究部会長;三河湾で観測・調査・研究を実施)
参考資料1
海域, 季節, 河川流量, 鉛直循環流量, 流量倍率, データ・出典
R(m3/s), Q(m3/s), Q/R
東京湾, 夏, 396, 2201, 5.6, 観測値 宇野木
冬, 124,1635, 13.2, 海の研究 1998
伊勢湾, 夏, 800,3000, 3.8, 観測値 藤原ら
冬, 250,6000, 24.0, 海の研究 1996
三河湾, 夏, 137,1169, 8.5, 観測値 宇野木
冬, 60,1272, 21.1, 海の研究 1998
渥美湾, 29.3,2091, 71.4, 数値計算 2000
断面C 中部地方建設局 #
中部地方建設局の計算結果の基本的誤り
1. 外部境界線を三河湾口に置いている。豊川の流量変化に応じて湾口の値が変化するはずであるが、境界条件はこの変化を無視した計算結果を与える。
2. 渥美湾の鉛直循環流量は、豊川流量の71倍にも達している。これは他のない湾の値より極端に大きく、信頼し難い。
(添付図) 
第14回豊川の明日を考える流域委員会資料
参考資料2
鉛直循環流量の河川流量に対する比率
海域, 季節, 河川流量, 鉛直循環流量, 流量倍率, 出典
R(m3/s), Q(m3/s),Q/R,
東京湾, 夏, 396, 2201, 6, 海の研究 1998
冬, 124, 1635, 13, 宇野木
伊勢湾, 夏, 800, 3000, 4, 海の研究 1996
冬, 250, 6000, 24, 藤原他
三河湾, 夏, 137, 1169, 9, 海の研究 1998
冬, 60, 1272, 21, 宇野木
大阪湾, 夏, 130, 3300, 25, 沿岸海洋研究1994
藤原他
大阪湾, 秋, 120, 4520, 38, 沿岸海洋研究1993
湯浅他
広島湾, 年, 87, * 7, 沿岸海洋研究2000
(最大) 14, 山本他